最終更新日 2024.11.1
SNSが普及し、マーケティングツールやブランディングツールとしての活用を検討している企業、すでに運用している企業が増えています。
うまく運用すれば低コストでプロモーションを行える有用なツールである一方で、炎上や情報漏洩などのリスクも抱えており、運用には注意が必要です。安定した運用を行い、リスクを未然に防ぐためにはSNSの運用方針や具体的な運用の仕方について定めたガイドラインの作成が必要不可欠といえるでしょう。
とはいえ、ガイドラインをどのように作成すればよいのかわからず、雛形がほしいと考えている企業も多いのではないでしょうか。
この記事では、実際の企業のSNS運用ガイドラインの紹介も行いながら、SNS運用ガイドラインの作成方法を解説していきます。
ガイドラインに含めることが推奨される項目なども紹介するので、参考にしながら自社の状況と照らし合わせて適切なSNS運用ガイドラインを作成しましょう。
なお、炎上や情報漏洩などのリスク対策を意識されていたり、SNS運用ガイドライン違反に素早く気づきたい方は、SNSモニタリングツールをご利用ください。
SNS運用ガイドラインにひな形の使用は適さない
SNS運用ガイドラインとは、SNSの運営や利用においてのルールを社内向けに定めたもののことを指します。
ガイドラインの定義は企業によって異なり、必要な詳細度も大きく異なるため、自社の実態に即したものを制定する必要があります。そのため、企業の個別の事情を考慮せず、ひな形を用いてガイドラインを制作することは推奨されません。
業種、発信内容、ガイドラインを用いる社員の範囲、社員のスキルレベルなどさまざまな要素を考慮して制作しなければ、うまく機能しないのみならず、ひな形があることがかえってリスクになる場合もあります。
ガイドラインに含めることが推奨される項目はありますが、自社の状況を考慮、反映したひな形を制作する必要があるといえます。
SNS運用ガイドラインの種類
SNS運用ガイドラインは主に以下の2種類を作成するのが一般的といえるでしょう。
企業のSNS運用の状況をもとにオーバースペックにならない、実態に即したガイドラインの制作が必要です。
社内での企業公式SNSアカウント担当者向けのガイドライン
ひとつめは、社内の企業公式SNSアカウント運用担当者向けのガイドラインです。
企業公式SNSアカウントの運用は、企業のブランドイメージを直接左右する重要な役割を担っています。そのため、担当者が迷いなく運用できるよう明確なガイドラインを設けることが不可欠です。
また、SNS特有の迅速な情報拡散を考慮し、不適切な投稿や誤解を招く表現を避けるためのチェック方法などについても言及する必要があるでしょう。
さらに、炎上リスクを最小限に抑えるために、ネガティブなコメントへの対応方針や危機管理マニュアルを事前に策定しておくことも重要です。
これにより、企業の信頼性を高め、ブランド価値を維持、向上させることが可能になります。
社外での個人的なSNS利用向けのガイドライン
ふたつめは、社外での個人的なSNS利用向けのガイドラインです。
従業員が個人的にSNSを利用する際にも、企業の評判に影響を与える可能性があるため、一定のガイドラインを設けることが重要です。企業に関する機密情報や未発表のプロジェクトについての言及を避けるように指導することが必要です。
さらに、他者を中傷するような発言や、差別的なコメントは厳禁とし、ネット上での倫理的な行動を促すことが重要です。
これにより、個人のSNS利用が企業のブランドに悪影響を与えるリスクを軽減できます。企業だけでなく、従業員個人を守るためにも制定が必要不可欠といえるでしょう。
SNS運用ガイドラインに定めるべき項目
SNS運用ガイドラインに定めるべき項目は各社の状況によって変わります。
ひな形をそのまま使用することは推奨されませんが、一般的に定められていることが多い項目を紹介します。
上記で紹介した項目をベースに、自社に必要な項目を取捨選択し、実態に即した過不足ないガイドラインの制定を進めましょう。
また、作って終わりではなく、社内での周知徹底、定期的な研修などを通し、社員にSNS運用ガイドライン遵守の意識を持たせることが重要です。
基本方針、原則
SNS運用ガイドラインの基本方針は、企業の経営理念や社会的責任に基づき、企業が目指す姿、ミッション、ビジョンなどを明確に示すものです。
基本方針、原則は、SNSを通じてどのようなメッセージを発信するかを決定する基盤となるため、特に重要な項目といえるでしょう。
基本方針、原則を定めることで、軸が定まり、ずれた投稿を作成するリスクを軽減できます。一貫性のある発信が可能になり、マーケティングやブランディングの強化につながります。
SNS参加にあたっての心構えや姿勢
SNSに参加するにあたっての基本スタンス、倫理観、態度などを定めます。
社会的責任を果たすため、法令遵守の観点や社内規範にも触れる必要があるでしょう。心構えや姿勢について定めることで従業員ひとりひとりが企業の顔であることを意識づける効果も期待できます。
SNSの利用目的
SNS運用の目的を明確にすることは、効果的な運用の第一歩です。
企業やブランドの認知度向上、顧客とのコミュニケーション促進、ブランディング強化など、目的は多岐にわたりますが、企業本位の内容ではなく、「商品をお客様に知っていただくため」など顧客目線で記載するとよいでしょう。
目的を定めることで、投稿内容、ターゲット層、表現方法などの運用方針が決まり、戦略的なSNS活用が可能となります。具体的な目標を設定し、それに基づいたKPIを策定することで、運用の成果を測定し、改善を図ることができます。
適用範囲
SNS運用ガイドラインの適用範囲を明確にすることも、ガイドラインの効果的な運用に不可欠です。
役員、一般社員、アルバイトなどどの立場の社員まで適用されるかを定めましょう。
また、社内だけでなく社外でのSNS利用においても情報漏洩や炎上リスクがあるため、一定のルールを設けることが推奨されます。退職者についての秘密保持についても定めましょう。
個人の発信が企業の評判に影響を与えるリスクを軽減し、企業だけでなく社員を守ることにもつながります。
所属の開示に関する考え方
SNS上での発信において、所属の開示は慎重に行う必要があります。社名を出してSNSを利用することについての可否や注意点などを定めましょう。
情報発信の責任を明確にする効果があります。
免責事項
SNS運用における免責事項は、企業が発信する情報の正確性や完全性についての責任を限定するために重要です。
投稿内容が誤解を招く可能性がある場合や、外部リンク先の情報についての責任を負わない旨を明記することが求められます。企業が予期せぬトラブルに巻き込まれるリスクを軽減し、安心して情報発信を行うことが可能になります。
「SNS上の発言は公式見解を表すものではありません」「公式な見解はプレスリリースを確認ください」などの旨を記載するケースが多いです。
内部情報、業務に関する情報発信ルール
企業の内部情報や業務に関する情報発信には、厳格なルールを設けることが不可欠です。
機密情報や未発表のプロジェクトについてはSNSでの言及を禁止し、情報漏洩を防ぐためのチェック体制を整えることなどが重要です。
また、情報発信前には、関係部署との確認を徹底し、誤解を招く表現を避けること、許可なく投稿しないことなどをルール化するとよいでしょう。発信による企業の社会的信用の損失やブランド価値の低下などのリスクから守ることができます。
禁止事項や投稿の削除
SNS運用における禁止事項を明確にすることで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。
差別的な発言や他者を中傷するような投稿は厳禁とし、これに違反した場合の投稿削除基準を設定することが重要です。
また、削除の判断基準を明確にしておくことで、万が一不適切な投稿があった場合に、迅速かつ適切な対応を行えます。先手を打った対応を講じることで企業イメージの低下を最小限に食い止められるでしょう。
問題発生時の対応方針
SNSで問題が発生した際の対応方針を事前に策定しておくことは、迅速な問題解決に必要不可欠です。
初期対応の手順、関係者への連絡体制、公式声明の発表方法などを明確にしておき、トラブルの拡大を防ぎます。ガイドラインを作成しただけで問題発生にスムーズに対応できるわけではないので、ガイドラインの作成と周知徹底、定期的な研修はワンセットで考える必要があります。
また、問題が発生した場合は対応後の振り返りを行い、必要に応じてガイドラインへの追加を行い、ブラッシュアップしていくことも重要です。
懲戒
SNS運用ガイドラインに違反した場合の懲戒規定を設けることで、従業員の遵守意識を高めることができます。違反の程度に応じた適切な処分を明示し、ガイドラインの重要性を強調することが重要です。
従業員ひとりひとりの意識をたかめることで、企業全体のガイドライン遵守を促進し、組織の一体感を高めることができます。
SNS運用ガイドラインを策定する効果、メリット
SNS運用ガイドラインを策定する効果とメリットは以下の通りです。
上記について詳しく解説していきます。
社員のSNSリテラシーの向上による炎上回避
SNS運用ガイドラインの策定は、社員のSNSリテラシーを向上させる重要な手段です。
ガイドラインを通じて、SNS上での適切な振る舞いや情報発信の方法を学ぶことで、不適切な投稿や炎上を未然に防ぐことができます。投稿内容の確認プロセスや、誤解を招く表現を避けるための注意点などを盛り込み、社員がSNSを利用する際の基準を明確にしましょう。
また、定期的な研修やワークショップを通じて、最新のSNSトレンドやリスクについての知識をアップデートすることも重要です。
個人SNSの利用についてのリテラシー向上も企業の機密情報の漏洩リスクを下げ、ブランドイメージの低下や業績の悪化などの不利益を未然に防止することにつながります。
問題発生時の行動指針
SNS運用ガイドラインに問題発生時の行動指針を含めることで、トラブルが起きた際の迅速かつ効果的な対応が可能になります。適切な対処により炎上の長期化や二次被害を未然に食い止められます。
具体的には、初動対応の手順、関係者への連絡体制、公式声明の発表方法などを明確にすることが求められます。過去の事例などを参考に実用性の高いガイドラインに仕上げることが重要です。
アカウントの属人化の防止
SNS運用ガイドラインは、アカウントの属人化を防ぎ、組織全体で一貫した運用を実現するために重要です。
投稿内容、頻度、トンマナなどの基準を明確にすることで、誰が担当しても同じ品質の情報発信が可能になります。担当者の交代があっても運用が滞ることなく、企業のSNSアカウントを安定的に運用できます。
また、複数の社員がSNS運用に関与することで、知識やスキルの共有が進み、チーム全体のスキルアップにつながります。すべて自分がやらなければと担当者が精神的負担を抱えるのを防ぐ効果もあります。
社員のメンタルヘルスを健全に保つためにもSNS運用ガイドラインは必須といえるでしょう。
企業のSNS運用ガイドライン例
企業のSNS運用ガイドラインの事例を紹介します。
化粧品会社大手
株式会社資生堂は、「原則」と「ガイドライン」で構成されたソーシャルメディアポリシーを公開しています。「原則」を一般に公開し、ユーザーにも周知しています。
ソーシャルメディア参加の目的、心構え、社員に求めることなどのシンプルで無駄のない構成が特徴的で、資生堂のソーシャルメディアへの向き合い方が表れています。
ソーシャルメディアへの参加の目的を顧客の意見や感想をきくため、商品・サービスを深く知ってもらうため、顧客満足度と資生堂グループの信頼とブランド価値を高めるためなどと定めています。
「お客さま」という単語が頻出していて、企業本位ではなくあくまで顧客視点の運用を重視している点が好印象で、資生堂のブランドイメージにマッチしたガイドラインといえるでしょう。
家電メーカー大手
シャープマーケティングジャパン株式会社は、「シャープ 公式Twitterアカウント コミュニティ・ガイドライン」を制定しています。
リスク管理に重きを置いており、免責事項の説明を主な目的としています。「本ガイドラインの内容にご同意いただいた上で本アカウントをご利用賜りますよう、お願い致します」と前置きしたうえで、コメントやDMへの対応、フォロー、リフォローについてなど公式Twitterアカウントが実施できないことやしないことなどについても示されています。
ユーザーに対する禁止事項を定めている点も特徴です。禁止事項に該当する行為が確認できた場合はブロックやフォロー解除を実施すると謳っており、誹謗中傷や炎上へのリスクに備えた内容となっています。
リスク管理重視のSNS運用ガイドラインを作成したい場合は参考にするとよいでしょう。
SNS運用ガイドラインの違反を素早く検知するためにmimamornの活用がおすすめ
SNS運用ガイドラインの制定は、SNSの健全な運営やリスク管理の入り口に過ぎません。
ガイドラインの制定により炎上などの問題が発生するリスクを下げることはできますが、完全に問題を防止できるわけではありません。万が一ガイドライン違反が発生した場合は速やかに対処する必要があり、いち早くガイドライン違反を検知することで被害を最小限に抑えられます。
「ミマモルン -Mimamorn-」は、SNS運用ガイドライン違反をいち早く見つけるために役立つモニタリングサービス。
モニタリング対象はXやInstagramなどのSNSだけにとどまらず、掲示板やニュースサイトにおいても事前に登録したネガテイブキーワードが投稿されていないかを24時間365日監視します。
毎月のリスク状況レポート、評判ステータスの分析レポートなども取得可能で、今後のリスク管理対策の改善にも役立てられます。
実際にSNS運用ガイドライン違反が発覚し、炎上などの問題に発展した場合には、謝罪文作成や記者会見の設定などに関する支援も受けられます。炎上などの問題を未然に防ぐだけでなく、発生した場合までオールインワンで対策できるのが魅力です。
月々5万円からと低コストではじめられるので、健全なSNS運用を目指したい場合は導入を検討するとよいでしょう。