最終更新日 2024.10.7
現代のビジネス環境では、デジタル技術の活用が不可欠でありながら、同時にデジタルリスクの増大も避けられません。あなたの会社でも、DX推進やデータ活用、リモートワークの普及などで新たなリスクに直面しているのではないでしょうか。
本記事では、デジタルリスクの概要とそれが企業に及ぼす影響、デジタルリスクが発生する要因について詳しく解説し、効果的なデジタルリスクマネジメント方法を提供します。適切なデジタルリスク管理は、企業の持続可能な成長と競争力維持に不可欠です。
ぜひ最後までご覧になり、実践的な対策を学び、自社のリスク管理を強化しましょう。
デジタルリスクとは?
デジタルリスクとは、デジタル技術やインターネットの利用に伴って発生するリスクの総称です。デジタルデバイスやSNS、ITツールなどを使用することによって、情報漏洩や炎上リスクなどさまざまなリスクが伴います。
デジタル化の進展により、業務の効率化やコスト削減、新たなビジネスモデルの創出が進む一方で、これらのリスクも増大しています。
各企業は、このデジタルリスクを最小限に抑えるために対策する「リスクマネジメント」が重要です。
企業が直面するデジタルリスクの具体例
企業が直面するデジタルリスクは、情報漏洩や炎上など多岐にわたります。これらのリスクは企業の信頼性や経営に直接影響を与える可能性があります。だからこそデジタル時代において、デジタルリスクの具体例を理解し、対策を講じることが極めて重要です。
企業が直面するデジタルリスクの具体例には以下のようなものがあります。
1. 風評被害やSNS炎上(レピュテーションリスク)
SNS上での批判や誤解が拡散し、企業の評判やブランド価値に悪影響を与えることがあります。
例えば、顧客がSNSにサービスへの不満を投稿。そこから投稿が拡散され、企業の信頼性の低下や売上げへの影響を引き起こす可能性があります。
実際にSNSで炎上してしまった場合の具体的な方法について知りたい方は下記記事をご覧ください。
ネット炎上したときの対処法 SNSが炎上したらどう対処したらいいの?
2. 情報漏洩
内部不正、ヒューマンエラー、サイバー攻撃により、企業の重要な情報が漏洩するリスクがあります。
・内部不正
従業員が意図的に情報を持ち出し、情報漏洩が発生するケースなどが考えられます。
例えば、従業員が企業の機密情報を持ち出して競合他社に渡したり、顧客情報や個人情報を売却したりする事例が報告されています。これには、企業への不満から個人が犯行に及ぶケースもありますが、産業スパイによる組織的な犯行も存在します。
・ヒューマンエラー
従業員などによる操作ミスによって情報漏洩が発生するケースが考えられます。
例えば、従業員がメールの送信先を誤って設定し、企業の機密情報や個人データが外部に漏洩することがあります。また、適切なデータ処理を怠ったままパソコンなどの記録媒体を廃棄することで、情報が不正に利用される可能性もあります。
・サイバー攻撃
近年、サイバー攻撃が高度化・巧妙化しており、データ漏洩やフィッシング詐欺が従来の対策では十分に対応できなくなっています。
東京商工リサーチの調査によると、2022年に発生した情報漏えいのうち、最も多い原因は「ウイルス感染・不正アクセス」(55.1%)でした。また情報漏えいの原因になった媒体のうち、最も多いのは「社内システム・サーバ」でした。
サイバー攻撃には、メールにマルウェアが潜んだファイルもしくはURLを添付し、開封したパソコンを感染させる「ウイルス感染」や、第三者が不正入手したID・パスワードを使ってデータにアクセスしたり、OSやソフトウェアの脆弱性を突いて内部に侵入したりする「不正アクセス」(ハッキング)などが考えられます。
例えば従業員が誤ってスパムメール内のリンクをクリックしてしまい、そこからウイルス感染が会社全体に広がり、企業の機密情報を抜き取られてしまうなどが考えられます。ウイルス感染後の復旧作業には時間とコストがかかるだけでなく、場合によっては業務が止まってしまうため売上低下にも影響を及ぼします。
出典:東京商工リサーチ
3.法的リスク
インターネット上で他人の文章や写真を無断使用する「著作権侵害」や、「法令違反」「社内規則違反」などの規制違反による「コンプライアンス違反」は、企業に法的な問題を引き起こす可能性があります。
例えば、知的財産権の侵害による訴訟や、個人情報保護法に違反するデータ管理の問題が起こる場合があります。法的トラブルは時間と精神を削られるだけでなく、トラブルが公になれば企業のイメージが悪くなる可能性があります。
4.ITシステムの不具合
ソフトウェアのバグやハードウェアの故障により、企業の業務が一時停止するリスクがあります。
例えば、クラウドサービスの障害でデータへのアクセスが不能になる、システムのアップデートにより重要な機能が停止するなどが考えられます。この障害により、顧客対応や取引の遅延が発生し、企業の信頼性に悪影響を与える可能性があります。
デジタルリスクが企業に与える影響
デジタルリスクが及ぼす企業への影響は相互に関連しており、一つのデジタルリスクが企業に複数の影響を与える可能性があります。
例えば、報漏洩が発生した場合、顧客の信頼低下だけでなく、法的責任や財務的損失も引き起こすことがあります。さらに、その情報漏洩がSNSなどで拡散されれば、企業のレピュテーションやブランドイメージにも深刻な影響を与えることが考えられます。
そのため、企業はデジタルリスクに対する適切な管理体制を構築し、リスクの予防と迅速な対応をしていくことが重要です。
本章では、企業がリスク管理を強化し迅速な対応策を講じることがなぜ重要なのか、その理由を掘り下げていきます。
社会的信頼の喪失
デジタルリスクが企業に与える影響として、社会的信頼の喪失があります。
例えば、社内の操作ミスにより顧客の個人情報が流出した場合、「この会社に個人情報を預けて大丈夫なのだろうか」という不安が高まり、顧客の信頼が低下します。さらに、取引先も自社の情報が流出するリスクを懸念し、ビジネス関係の見直しを検討する可能性があります。
また、メディアによる報道やSNSでの情報拡散により、世間からのブランドイメージが大きく損なわれることにつながります。
このようにデジタルリスクマネジメントの体制が社内でしっかり構築できていないという印象がつくことは、企業の社会的信頼の喪失につながります。
金銭的ダメージ
例えば、データ漏洩が発生した際、顧客や取引先からの訴訟に直面する可能性があります。場合によっては損害賠償金の支払いが必要となりません。企業は多額の賠償金を支出しなければならず、財務状況に大きな影響を与えます。
さらに、同じデジタルリスクによる損害を発生しないために、セキュリティ対策の強化が不可欠です。デジタルリスクを防ぐ環境を構築するにあたり、企業は最新のセキュリティ技術を導入し、システムの脆弱性を定期的にチェックする必要があります。このためのセキュリティ対策費用は年々増大しており、企業の運営コストに大きな負担をかけることになります。
また、デジタルリスクが原因で顧客の信頼を失うと、顧客離れが発生し、売上の減少につながります。安全性に疑念を抱いた顧客は他の信頼できる企業に移行する傾向があります。
既存顧客が離れていくだけでなく、新規顧客の獲得が難しくなり、売上が大幅に減少することがあります。売上の減少は、企業の収益に直接影響を及ぼし、経営の安定性を揺るがす要因となります。
結果的には多くのビジネスチャンスを逃すことにつながります。
企業存続の危機
デジタルリスクによる法的責任とコンプライアンス違反によるペナルティや罰金は企業の経営を圧迫し、最悪の場合は事業継続が困難になる可能性があります。
例えば、個人情報の漏洩や不正利用が発生した場合、個人情報保護委員会からの処分や損害賠償請求が行われます。これにより、企業は数千万円から数億円規模の罰金を支払うことになる場合もあります。
実際に、教育関連事業を行っている大手企業は、顧客や取引先の情報漏洩により訴訟が発生し、1300万円の損害賠償を支払う結果となりました。
さらにネガティブな情報の拡散により企業イメージが大きく傷つくと、レピュテーションは回復困難なものとなり、時間とコストのかかる修復作業が必要となります。そしてデジタルリスクへの適切な対応が欠如すると、競争力が低下し、市場での地位を失う恐れがあります。
採用活動への悪影響
デジタルリスクが企業の採用活動に与える影響は多大なものとなります。
例えば、SNSやメディアで拡散される企業や自社サービスに関する否定的な情報は、企業のブランドイメージを損ないます。このような状況下では、求職者は企業の社会的責任や価値観に対する不安を抱くことがあります。
求職者は、安定した職場環境や良好な企業文化を求める傾向がありますが、風評被害や炎上によってそれらが揺らぐと、企業の信頼性や安定性に対する疑問が高まり、企業への就職を躊躇します。
採用市場の競争が激化する現代では、良いイメージを持ち続けている企業に注目が集中することは明らかでしょう。
業務効率の低下
例えば、システム障害が発生すると、企業の主要な業務プロセスが一時停止する可能性があります。この間、従業員は業務を続けることができず、生産性が低下します。特に大規模なシステム障害では、日常業務の停止だけでなく、顧客サービスの提供や取引の遂行にも深刻な影響が及ぶことがあります。
例えば、サイバー攻撃に備えてセキュリティシステムを強化し、定期的な監視やアップデートを行う必要があります。これには専門的な知識と時間が必要であり、それが他の業務への影響を生むことがあります。さらに、セキュリティ対策の強化にはコストもかかるため、企業の経済的な負担が増大する可能性もあります。
このように、システム障害やセキュリティ対応による業務効率の低下は、企業の運営に直接的な影響を与える要因となります。
さらに、誹謗中傷や炎上などのデジタルリスクは、会社全体の士気を低下させ、精神的な問題によって業務効率を低下させる恐れもあります。
企業はこれらのリスクに対して事前に対策を講じることで、業務の持続性を確保し、効率的な運営を実現する必要があります。
デジタルリスク発生要因
デジタルリスクは現代のビジネス環境において避けて通れない課題となっています。デジタルリスクを早急に発見し対応するためには、発生原因を知ることが重要です。
本章では、デジタルリスクが発生する主な原因について解説し、企業がどのようにこれらのリスクに備えるべきか、デジタル時代を生き抜くための重要な知識を提供します。
【外的要因】DX化の成長に伴うセキュリティ不足
技術の急速な進歩や法規制の変化など、「外部環境の変化」に対する適応が遅れることで、デジタルリスクが発生する原因となります。
特に、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に伴い、ビジネスプロセスのデジタル化が急速に進んでいます。これにより、デジタル領域でのリスクが増大しています。
例えば、サイバー攻撃が高度化・巧妙化しており、攻撃者はますます洗練された手法を用い、企業に甚大な被害をもたらす可能性が高まっています。
また、新たなITシステムを導入するにあたって、従業員のデジタルリスク対策への対応が追いついていない点も原因です。
DX化が進まず、旧式のシステムを使用し続けることで業務効率が低下し、競争力が損なわれる可能性がありますが、無理にDX化を進めることで、適切なデータ管理やプライバシー保護が行われていないために、顧客情報が漏洩する可能性もあります。
さらに、企業のセキュリティシステムの脆弱性を突いたサイバー攻撃によってもデジタルリスク発生の原因につながります。
【内的要因】ITリテラシーの欠如によるセキュリティ対策不足
従業員のセキュリティ意識の低さによる「内部環境」によっても、意図しない情報漏洩や不正アクセスなどのデジタルリスクは発生します。
例えば、企業が従業員に対して十分なセキュリティ教育を行っていない場合、従業員は適切なセキュリティ対策を知らないまま業務を行います。また、従業員が業務中に公共のWi-Fiを利用して重要なデータにアクセスしたり、パスワードを共有したりするなど、情報セキュリティ不足による不注意な行動を取ることで、情報が外部に漏れる可能性があります。
さらに、一部の従業員が意図的に企業の機密情報を外部に持ち出すことで、情報漏洩や不正利用が発生します。この場合、企業は従業員による内部不正を監視するシステムや、情報の持ち出しを防ぐ対策を講じていないため、リスクが顕在化します。
デジタル時代におけるビジネスでは、SNSの普及やリモートワーク、それに伴うデータ活用が進み、大量の個人情報や機密情報を扱うことになります。これに伴い、情報漏洩のリスクも高まっています。データの利活用は競争力の源泉となりますが、それと同時にデータ保護の重要性も増しています。
SNSやホームページへの不適切な投稿
SNSや企業の公式ホームページにおける不適切な投稿が、情報漏洩や炎上などのデジタルリスク発生の原因となります。
例えば、従業員が個人のSNSで、会社の内部情報や機密情報を誤って公開することがあります。「新製品の開発にまつわる進捗状況」や「重要な契約内容」が漏れることで競合他社にメリットを与える場合があります。
「新製品の開発にまつわる進捗状況」が競合他社に漏れた場合、競合他社は模倣し、同等かそれ以上の製品をより早く市場に投入する可能性があります。これにより、企業は競争優位性を失い、売上や市場シェアに大きな影響を及ぼします。
「重要な契約内容」が競合に漏れた場合には、取引先に対してより良い条件を提案し、契約を奪う可能性があります。結果として、企業は供給チェーンが崩れ、競争力が低下するリスクにさらされます。
さらに、従業員がSNSで会社の取引先や顧客に対して不適切な発言を行ったり、誤解を招く情報を発信したりすることも、企業のイメージや信頼に悪影響を与え、炎上につながる可能性があります。
企業の公式アカウントを通じて行われる投稿は、情報の正確性や慎重な管理が求められます。これらのリスクを最小限に抑えるために、適切なガイドラインや教育プログラムを導入し、社員の意識を高めることが重要です。
これらの要因により、企業はデジタルリスクに対する適切な管理システムの構築が必要です。企業の持続可能な成長と競争力を維持していくためにも、企業がデジタルリスクを効果的に管理し、信頼性の高いビジネスを展開することが重要です。
効果的なデジタルリスクマネジメント対策
デジタルリスクが発生する要因を理解した上で、具体的な対策の実施を進めることが重要です。
デジタルリスクマネジメント(デジタルリスクを最小限に抑えるために対策すること)は、組織全体で集中した取り組みが必要となります。
本章では、デジタルリスク対策の具体的な流れを段階的に解説していきます。これらの手順を踏むことで、自社のデジタルのリスク管理をより強いものにし、企業の持続的な成長と安定したDX化を進めることができます。
1. 社内規則やガイドラインの整備
まず、社内規則やガイドラインの整備が必要です。これには、情報管理に関する規定の設置、機密保持に関する誓約書の締結、SNS利用ガイドラインの作成などが含まれます。これにより、従業員が情報を適切に管理し、不適切な投稿によるリスクを最小限に抑えることができます。
さらに、実際にリスクが発生した際にも、従業員が一貫した対策を取ることが可能となり、企業全体で一定の対応品質を維持することができます。
2. セキュリティ対策の強化
セキュリティ対策の強化は、デジタルリスクマネジメントの核心です。
最新のウイルス対策ソフトの導入、セキュリティポリシーの作成と運用を通じて、企業の情報システムを保護します。また、定期的なセキュリティ監査を実施し、システムの脆弱性を早期に発見し、対応することが重要です。
3. 従業員教育の実施
ITリテラシー向上のための研修や、セキュリティ意識向上のためのトレーニングを実施することで、従業員のデジタルリスクに対する認識を高めます。特にSNS利用に関する教育は、従業員が誤って機密情報を公開しないようにするために必要です。
4. デジタルリスク対応手順の策定
デジタルリスクの洗い出しと評価を行い、リスク対応の優先順位を付けます。これにより、どのリスクが企業にとって最も重大であるかを明確にし、適切な対策を講じることができます。
そこからそれぞれのリスクが発生した緊急時の対応手順を明確化し、定期的にシミュレーショントレーニング実施することで、インシデント発生時に迅速かつ適切に対応できる体制を整えます。
デジタルリスクへの対応手順には、緊急時の対応方法だけでなく、情報の共有と迅速な意思決定を促すための責任者の連絡先、想定されるシナリオごとの対応フローが含まれます。
5. デジタルリスク管理体制の構築
デジタルリスク管理体制の構築として、専門部署の設置やシナリオごとの経営層の関与要否、責任の明確化も行いましょう。管理体制を整えることで、各部門が連携した組織全社でのデジタルリスクマネジメントが構築できます。
6. 定期的な見直しと改善
デジタルリスクマネジメントの継続的な評価と改善を行い、新たなリスクへの対応策を検討しましょう。これにより、常に最新のリスク管理体制を維持し、企業の安全性を確保します。
AIなどの機械学習を活用したセキュリティシステムの導入も効果的です。これにより、外部環境の変化に対応できる、高度なリスク管理が可能です。
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まとめ|デジタルリスクは未然対策が重要
デジタル技術の進展に伴い、企業は様々なデジタルリスクに直面しています。
特に情報漏洩やSNS炎上、サイバー攻撃、法的リスクは企業の信頼性や経営に深刻な影響を与えます。これらのリスクを未然に防ぐためには、従業員のITリテラシー向上やセキュリティ対策の強化が不可欠です。また、外部環境の変化に対応し、最新のセキュリティ技術を導入することも重要です。
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